2012年6月29日金曜日

MARTIN MARGIELA (マルタン・マルジェラ)



この写真、何だと思いますか?


実はこれ、ブランドタグなんです。

ブランドの名前なんてどこにも書かれていない、四隅をしつけ糸で止めただけのタグ。このタグを始めてみたときは驚きました。デザイナーズ・ブランドというのは、一般的に己の名をアピールするものだという先入観があったのですが、その概念を見事に消し去ってくれました。

このブランドの名は、Maison Martin Margiela (メゾン マルタン マルジェラ)。現在はデザインチームがデザインを担当していますが、創業デザイナーの名はマルタン・マルジェラ。


マルタン・マルジェラは、このタグからもわかるように、それまでのファッションに大きな変流をもたらしました。

高級志向が主流でアートであるとされた、それまでのファッションを否定するかのように、アンチモードを掲げ、古い布を用いて作った服や、古着の軍服やジーンズをリメイクしたりペイントしたもので数々のコレクションを作り上げました。そのコレクションたちは「デストロイ・コレクション」と呼ばれ、まさしくファッションの概念を破壊するものであり、そしてそこから新たなファッションを創造したのです。

マルジェラの定番ライダース


マルタン・マルジェラは、ベルギーに生まれ、かのアントワープ王立芸術アカデミーを80年に卒業しています。同期には、アントワープ6と呼ばれるファッション界に新風をもたらした6人のデザイナーがおり、マルジェラもアントワープ6と並び評されます。84年に見たジャン・ポール・ゴルチエのショーに感銘を受け、ゴルチエのアトリエにアシスタントとして入り、修行を積みます。

88年にメゾン マルタン マルジェラを立ち上げ、コム・デ・ギャルソンとコラボレートを行ったり、エルメスでもレディースのプレタポルテを手がけます。

華々しい活躍ですが、2009年に、マルタン・マルジェラが一線から身を引いていたことがわかりました。ひっそりと、人知れず。それがいつだったのか、はっきりした時期は誰も知りません。その理由もわかりません。一節では、ディーゼルグループに買収されたことにより、モードにはびこる商業主義に嫌気が差したとも言われていますが、真相は定かではありません。

しかしながら、ファッションにおいてアートを否定し、ファッションはクラフトワーク(技巧、技術)であると捉え、それまでの概念を破壊し、新しい価値観を提供することによって、結果として新たなアートを生み出したマルタン・マルジェラのモードには、今なお多くの熱狂的なファンがいます。
毎シーズン発表されるエイズTシャツ


マルジェラは、表に顔を出さず、取材などもFAXとeメールによるやりとりのみだったそうです。そんな一面から想像するに、自身の引退(あえて引退と書きました)などは些細な事だったのかも知れません。おそらく彼にとっては、一人のアーティストよりも、クラフトワークを完璧にこなすチームの方が重要なのでしょうから。


ちなみに個人的な見解ですが、メゾン マルタン マルジェラというブランドは、日本人にとても馴染みやすく、着やすいブランドだと思います。もともとマルタン・マルジェラは日本とも縁深いようで、初期から仙台の「リヴォルーション」に世界一の取引先としてメゾンを支えてもらったり、世界初の路面店は東京に出店したりしています。そういったことも、一因となっているんでしょうか。


タグの数字の意味

メゾン マルタン マルジェラのコレクションは、コンセプトによってグループ分けされ、ナンバリングされます。
0~23までの数字が書かれ、いずれかが◯で囲まれたタグが縫いつけてあり、その数字からラインが読み取れる。

◯で囲まれた数字の意味
0手仕事により、フォルムをつくり直した女性のための服
0 10手仕事により、フォルムをつくり直した男性のための服
1女性のためのコレクション(ラベルは無地で白)
10男性のためのコレクション
4女性のためのワードローブ
14男性のためのワードローブ
11女性と男性のためのアクセサリーコレクション
22女性と男性のための靴のコレクション
13オブジェ、または出版物
MM6♀のための服
3フレグランス
3アイウェア
3キャンドル


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