2012年6月27日水曜日

RAF SIMONS (ラフ・シモンズ)


2012年4月、ファッション界にいくつかのビッグニュースがありました。

そのうちの一つが、空位となっていたクリスチャン・ディオールのアーティスティック・ディレクターに、ラフ・シモンズが就任するというニュース。

ラフ・シモンズ


ファッションデザイナー、ラフ・シモンズは、ファッションの学校に通っていません。
産業デザイン、家具デザインを大学で学んだ後、家具ギャラリーで家具デザイナーとして働きます。しかし、マルタン・マルジェラのショーを見たことにより、それまで興味を持っていたファッションの仕事をすることに決めたそうです。学生時代にインターンシップで、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクのメゾンで働いた経験も大きかったようです。

ファッションの道に進み始めたラフ・シモンズは、アントワープ王位芸術アカデミーのファッション科長、リンダ・ロッパと出会い、アカデミーへの入学を希望します。リンダに自分が作った服を彼女に見せると、入学を断られてしまいます。
「あなたがうちで学ぶことはない。コレクションをやりなさい」と。
その数ヶ月後、ラフ・シモンズの最初のコレクションが完成します。

天才どころではありませんね。
その後は自身のブランドであるラフ・シモンズ、そしてジル・サンダーで大きな成功を収めます。そしてついにクリスチャン・ディオールというビッグメゾンへ。
おそらくはこの人がいなければ、エディ・スリマンも現れなかったのではないかと。間違いなく、モードに一つのトレンドを生み出しました。


ラフ・シモンズという人の紹介はこれくらいにして。
ここからは私の個人的な、熱い思いを。ラフ・シモンズは、私がファッションに目覚める引き金となった、私自身の中で一番大きなデザイナーなんです。


90年代後半、ファッションに興味を持ち始めていた私は、ファッション誌を読みあさっていました。それはただ、流行を追いかけるためだけに。何が本当に良い物なのかもわからずに。
そんなあるとき、雑誌でラフ・シモンズのコレクションを見て、心が震えました。大げさでなく。本当にそんな感覚を持ったのです。

ラフ・シモンズのランウェイデビューとなった97A/W


反骨精神にあふれたランウェイ。少なくとも私は、このとき初めてモードの中にロックを見ました。とにかくどれもこれもがカッコいい。本当に、カッコいい、という言葉が一番しっくりくる。抑えきれんばかりのロック・スピリットを押し込めたようなコレクションは鮮烈で、荒々しくもナイーブで、青臭くて、今見てもカッコいい。

そこにあった服は、初めて心の底から「欲しい」「着たい」と思った服でした。

当時、学生だった私は、ラフ・シモンズの黒いカットソーを2万円も出して買いました。学生には(当時の私には)結構な勇気のいる、厳しい値段です。初めて、一枚の洋服にそんな金額を使いました。(でも、今考えるとクオリティの割には安いです。)それはもう、ヘビーローテーションで着ました。

そしてコンバース・オールスター。ランウェイでは、モデルは全員、汚しを入れてユーズド感を出したオールスターを履いていました。すぐに靴屋へ走り、オールスターを買ってきて、わざと泥をこすりつけて汚したり、ペイントしたりしました。

そのふたつを身に着けてストリートを歩くと、わくわくしました。


そんなラフも大人になり、今の彼が作る服は芸術の領域に入ったと言ってよいでしょう。
そのカラーリングとテーラリングには眼を見張るものがあります。今のラフ・シモンズの作る服は、美しい。ジル・サンダーでレディースを手がけたことも、大きな転換となったかも知れません。これからは、クリスチャン・ディオールでもその力を見せてくれることでしょう。
ジル・サンダー2011春夏



二度と取り戻せない、ロック・スピリッツの刹那。それは間違いなく青春であり、そこに間違いなく、私の青春も存在していました。今でもときどき、青春を思い出したいとき、年甲斐もなくあのカットソーを着てストリートに繰り出すんです。2万円で買った、黒いカットソーを。


RAF SIMONS



ラフ・シモンズ2012春夏

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